肩書を考える ―自信のある人とは―Ⅲ
宗氏の文面はさらに次のように続く。
― 老人ホームではもう昇進する必要もなければ金儲けをする必要もないので、大企業の元トップであろうが元外交官であろうが、話しが難くてユーモアのない人には誰も用はありません。
所属の組織を利用して「あなたは誰か」に答えてきた人たちは、一人になることが難しいのです。―
まあ、当たり前といえば当たり前のことが書かれているのだが、こういう典型的な現象が実際に起こっているというのがある意味もの悲しい。
以前、税理士会の小さな支部を近隣の大きな支部と合併させて、会務の効率化を図ったらどうか、という試みが成されたことがある。
試みといっても、小さな支部の支部長に1回ヒアリングを実施したに過ぎないが。
私は、当時その合併に際して吸収されてしまう方の小さな支部の支部長だった。
ヒアリングに際して意見を聞かれた私は
「どうぞ。どうぞ。効率化を図れるのならどんどん推進してください。」
と、述べた。
ところが、私の意見は少数派で、大半は合併に反対であった。
中には
「『支部長』という肩書は、田舎ではそれなりに効き目がある。この肩書を残すためにも支部合併はやめてもらいたい。」
という人までいた。
「効き目って・・・いったい何言ってんだろう、この人は。」
と、私は少なからず驚いたが
「こんな小さな肩書でもしがみつきたい人はいるんだなあ・・・」
と、やや複雑な気分だったことを覚えている。
つづく