マフラー雑感Ⅱ

ウール素材のそれは確か4800円だったと記憶している。

それほど高価なものでもない。

とはいえ、もう40年も昔の話だ。

月給10万ちょっとの新人サラリーマンにはそれでも痛かったが、思い切って購入した。

 

上着の内側にそのマフラーを巻いて上からコートを羽織ったときの感触は今でも覚えている(ような気がする。)

「あたたかい。マフラーってこんな重宝なものだったんだ!」

軽く感動を覚え、その後は冬の間ずっと愛用した。

 

さて、それから数年たって勤め人を辞め、大学院に戻った私はスーツやマフラーから少し縁遠くなった。

それでも、少人数のゼミの時などはジャケットにネクタイくらいは締めて登校することが多かった。

 

冬になって

「やっぱりマフラーが1本あった方がいいな。」

と思った私は、原宿にあるメンズ専門店を覗きに行ってみたのである。

以前、重宝したウールのマフラーはもうどこへ行ったか分からなくなっていた。

 

その頃は、次はぜひカシミア素材のものが欲しいと思っていた。

今ではカシミアもかなり普及してきたけれども、当時はまだ貴重品であり高級品だった。

セーターなどカシミアを使用する分量の多いものは、値段が高くてとても手が出なかったので、まずはマフラーなどでその感触を味わってみたいな、と思ったのである。

 

 

 

つづく