『ねばならぬ』が多いんだな・・―「着道楽」?楽しく、面白く生きるのが、私の人生の目標(by石津謙介)―Ⅲ

本当のところは「着道楽」といってもいいくらい服が好きにもかかわらず、昔から日本の男のDNAに刻まれているのではないか、と思われる「着るものなんぞに・・・」、という後ろめたさがぬぐい切れないでいる私。

 

まあ、ごちゃごちゃ言っていてもしょうがないので、ここは素直に「服好き」というのがどういうことか、書くついでに自分を振り返ってみたい。

カミさんは、私の服好きには眉をひそめているのだが、私が「ファッション」という言葉が当てはまるようなレベルで「服」というものに興味を持ったのは、そのカミさんがそもそもの原因なのである。

 

あれはまだ、結婚を前提につき合い始める前だったと思う。

私が大学生の頃、どういうきっかけか、カミさんに何冊かの本を借りたことがあった。

その本というのが、ファッション関係の本だったのである。

 

その中の1冊は、くろすとしゆき氏の「トラッド歳時記」という本であった。

この本には、IVYファッションやトラッドファッションというのが何たるものなのか、どういう決まりがあるのか、さらにはどうじゃなきゃいけないのか、みたいなことがつらつらと書いてあった。

 

つまり「ねばならない」のオンパレードだったのである。

着るもんにそんな法則みたいなことがあるなんて、それまで考えたこともなかった私に、これは衝撃であった。

 

それもそうだが、だいたい使われている言葉がまるでわからない。

センターフックドベンツ、サイドベンツ、ナローショルダー、ダーツ、プリーツ、ダブルカフス、オッドベスト、バックストラップ、チノパン・・・・なんのこっちゃかまるでわからない。

確か、ボタンダウンシャツなんて用語も、このときはじめてちゃんと知ったような気がする。

 

まあ、ほとんどが横文字な上に、馴染みのない英語が多く、ちっとも頭に入ってこなかった。

ただ、挿絵のイラストを見ていて、こんな格好ができたらカッコいいんだろうな、とは思った。

 

本を返しに行ったとき、「どうだった?」と聞かれて「さっぱりわからなかった。だいたい『センターフックドベンツ』ってなに?」と答えたような気がする。

そのとき、

「男のファッションは『ねばならぬ』が多いんだな。」

という点が妙に気にかかったことを覚えている。

 

カミさんは小学校からの幼なじみなので、まるで垢抜けない私を見て、あのときはそんな本を貸してくれたのだろう。

別につき合っていたわけでもないので、この話はそれっきりになってしまった。

 

その後、結婚を前提につき合うようになるまで、大学生時代や社会人生活の数年間は頻繁に会うこともなかった。

たまに田舎に帰ったときに、数人の同級生と一緒になって、ミニ同窓会みたいなことをやっていただけである。

 

昨年、購入したものの着る機会がなかなかなかったスタジャン。

単色使いで渋いです。

 

つづく